18年勤めた会社を退職した理由
私は新卒で入社した地元企業に18年勤めた後、ベンチャー企業での副業期間2年を経て独立しました。
どちらの会社もそれぞれ特徴的で、色々な意味で学び深い体験でした。
最初の会社は地元では知らない人はいない大企業。
それはそれは優しく育てて頂きました。本当に感謝しています。
保険営業部門から始まり、経理、総務、監査、新規事業プロジェクトと様々な経験をすることができました。
特に、育児休業から復帰した直後は、やる気と会社への感謝の気持ちに溢れていました。
「絶対に会社を辞めない」
そう思って仕事に燃えていたことを覚えています。
それは、育児休業期間にはじめて「主婦業」をしたことが大きなきっかけでした。
消費者側の目線から世の中のサービスを見ることが中心になり、様々な改善点や自社サービスへの展開を考えると楽しくなりました。
定期的に郵送いただいた社内報を受け取るたび、自分が所属している場所、帰る場所があることを嬉しく思いました。
何より、自分の子供が生きていく社会を作るという点で、地元企業で働くことに大きな意義を感じていました。
ところが残念なことに、育児休業期間を終えて復帰してしばらくすると、気持ちは180度変わってしまったのです。
その原因になったのが、今まさに私が研修や講演で扱っているテーマ
「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」でした。
- ・育児中の女性社員には重要な仕事を任せない方がいいのでは
- ・短時間勤務中は昇給・昇格は一旦凍結
- ・「短時間で働いている」=「いつまでも会社の役に立っていない」前提の会話
- ・「『子供を預けてまで働いている』のはなぜ?」という会話
(=「子供を預けて働くこと」が異常、普通ではないという前提) - ・脈絡なく出てくる「お母さんなのに頑張ってるね」という声かけ
当時、育児休業を取得して短時間勤務で復帰したのは私が初めての社員。
会社側もどう扱うか模索中でしたし、私自身もどんな心構えでどう振舞っていくのかが定まっていませんでした。
- ・「良かれ」と思って労ってくださる方
- ・会話に困って、それしか話題に出せない方
- ・内心では「使えない社員」と思っていることを隠しきれていない方
様々でしたが、アンコンシャス・バイアスの教科書に出てくる様な、まさにこんな勢力が徐々に、確実に私の仕事へのモチベーションを削っていきました。
「今後、上を目指して頑張っていくのか?」
という人事課長の質問に
「自信ありません」
と答えたことを覚えています。
ただ、当時はまだ「ダイバーシティ」も「働き方改革」もない時代。
「上を目指していく」ということは、イコール今の男性管理職と同じ様に長時間労働をすることと同じ意味でした。
子供と一緒に時間を過ごすこと
やりがいある仕事をすること
この二つのことは、私にとってどうしても、どうしても譲れないことでした。
こんな普通のことが叶えられないなんておかしい、とも思っていました。
ワーママのあるある話、仕事・育児の両立で体力的にボロボロな所に、出口の見えない「働き方」に関する悩み。
「今のまま一生働くのは無理」
何年も考え続けた結果、自分で実現するしかないという結論に至ったのです。
これが、私が会社を退職した理由です。
退職したことに全く後悔はありません。
ただ、当時もっと色々と上手くやれただろうなと思うことは沢山あります。
まず、私自身を振り返ると「キャリアアップに関する知識の欠如」「コミュニケーションスキル不足」「問題解決能力の低さ」などなど、ビジネスパーソンとしての未熟さがありました。
退職後、コーチングや心理学、コミュニケーション、チームビルディングなどについて学ぶことで、「知らない」ということは本当に損失だったなということを実感しています。
当時、これを知っていたら会社を辞めなかったかもしれない知識。
持っていたらもっと上手に仕事が進められたスキル。
こんな考え方をしていたら、もっと会社のメンバーと「仲間」になれたなと思う考え方。
知っていたら、できていたら、当時もっと楽しく働けたなと思う数々のこと。
これらを、かつての自分の様に苦しい思いで仕事をしている方に「企業研修」という形でお届けできる今の仕事にやりがいを感じています。
目の前の方の人生が少しでも良い方向へ向かうために、できることをしたいと思っています。
退職を決意してから今日まで、様々な紆余曲折がありました。
その全てが今の私を形作っています。
今は起こったすべての出来事が愛おしく、感謝の気持ちでいられることを幸せに思っています。